定幅曲面とは平行な二平面で挟んだときの幅が方向によらず一定の凸閉曲面である。
定理 1
定幅曲面 S を平行な二平面 H と I で挟んだとする。
H と S の接点の一つを A, I と S の接点の一つを B とすれば、
AB と H は直交する。
上の定理により、幅が d の定幅曲面の一部分が半径 r の球面ならば、
r ≦ dであり、反対側は半径 d - r の球面
(r = d のときは一点)であることがわかる。
定理 2 Θ は定幅曲線で、
その上の二点 A, B を通る直線に関して対称であるとする。
直線 AB を軸に Θ を回転してできる曲面は定幅曲面である。
ルーローの三角形の三次元版を考える。
ABCD を一辺の長さが 1 の正四面体とし。
中心が A, B, C, D で半径が 1
の4つの球の共通部分の立体の表面を S とする。
S は定幅曲面ではないが、
以下の操作で定幅曲面にできる。
二平面 ACD と BCD で分割された4つの領域のうち、
A と B のどちらも含まないものに含まれる部分
(下左図の青い部分)を S から取り除く。
平面 ACD 上の中心が A, 半径が 1 の円弧 CD は S に含まれる。
この円弧を直線 CD
を軸に A が B に重なるまで回転してできる曲面を S に付け加える。
同じ操作を ABD と CBD, ABC と DBC に対して行う。
このようにして得られた曲面を S' とする。
P を C, D を中心とし半径 1 の球面の交わりの S 上の任意の点とするとき
(上中央の図)、
平面 PCD と S' の交わりはルーローの三角形であるから、
PCD に直交し、S' を挟む平行な 2平面の間の距離は 1 である。
したがって、S' は定幅曲面である。
以下で、定義する自己双対球面多面体に対して
上で S に対して行ったのと同じ操作を行えば、
定幅曲面が得られる。
定義 各面が半径 1 の球面の一部分である
多面体 P の頂点の個数と面の個数が等しく、
頂点の集合から面の集合への一対一写像 f があり、
以下の条件 (i), (ii), (iii) を満たすとき、P を自己双対球面多面体という。
(i) P の任意の二頂点 A, B に対して AB ≦ 1
であり、
(ii) AB = 1 <=> A は f(B) 上にある <=> B は f(A) 上にある。
(iii) A, B が P の一つの辺の両端ならば、
f(A) と f(B) は辺で接する。
P を自己双対球面多面体とする。
P の任意の頂点 A に対して (ii) より、
f(A) の中心は A である。
A, B が P の辺の両端であり、
f(A) と f(B) が接する辺の両端が C, D ならば、
f(C) と f(D) の接する辺の両端は A, B である。
このように、P の辺は組をなしている。
すべての組 AB と CD に対して
平面 ACD と BCD に対して、
または平面 CAB と DAB に対して上の操作を行えば、
定幅曲面が得られる。
頂点が 4個の自己双対球面多面体は上の S だけであり、
頂点が 5個の自己双対球面多面体は存在しない。
ABCDE を平面上の対角線の長さが 1 の正五角形とし、
F を AF = BF = CF = DF = EF = 1 となる点とする。
これら 6 点を中心とし、半径 1 の球の共通部分の立体の表面は
自己双対球面多面体である。
以下に、頂点が 7個と 8個の自己双対球面多面体の例を示す
(a = f(A), b = f(B), ...)。
最後に、回転体でもなく、
自己双対球面多面体からも得られない定幅曲面の例(幅は 2)を示す。
下の図形は定幅曲線である。
この図形を以下のように動かしたときの軌跡が定福曲面となる。
直線 OP1 を軸に P2 が
P3 に重なるように 90度回転し、
回転後の図形を直線 OP3 を軸に P1 が
P2 に重なるように 90度回転し、
さらに、直線 OP2 を軸に P3 が
P1 に重なるように 90度回転する。